2018年05月15日 中建日報
広島「補修・補強フォーラム」に1200人
(一社)コンクリートメンテナンス協会(徳納剛会長)による「コンクリート構造物の補修・補強に関するフォーラム2018~コンクリート構造物の健康寿命を考える~」が9日と10日、広島市中区のJMSアステールプラザで開かれ、2日間で延べ1200人が参加。適切な調査・診断と補修・補強によって健康寿命を延ばすため、産学官の専門家による最新知見や技術を熱心に聴講した。
毎年全国開催しているフォーラムは、今月2日の山口フォーラムに続いてこの日の広島で2会場目。今後は北海道、東京、大阪、福岡などの主要都市を中心とした全国11会場を8月末までに回り、延べ約6500人の来場者を見込む。
冒頭、主催者挨拶に立った徳納会長(福徳技研)は、「人の健康寿命は健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間をさすが、構造物の健康寿命は安全な状態で供用できるまでの期間。従来の事後保全的な対応では将来的に莫大な費用が必要だが、予防保全の考え方を導入することで、費用は大幅に減額できる」と強調。「劣化する構造物に対して適切な調査・診断・補修設計・工事を行うことは急務で、技術者の責務でもある。今年のフォーラムでも構造物の維持管理業務に携わる技術者の光明となるよう努める」と述べた。
1日目、トップバッターとして登壇した中国地方整備局企画部の浜崎宏幸技術調整管理官は、「社会資本のメンテナンスに関する取り組み」と題し、道路橋示方書の改訂における留意点や老朽化対策の流れなどについて解説したほか、近未来コンクリート研究会の十河茂幸代表は、「長寿命化のための点検要領について」をテーマに、健康寿命を延ばす維持管理のポイントや効果的な点検を行うための点検要領の作成の重要性を説き、業種間連携を目的に今年4月に立ち上げた同研究会への協力も呼びかけた。
また、広島工業大学教授の竹田宣典氏は、「コンクリート構造物を長生きさせるための方策」として、コンクリート・鋼材・表面保護のコラボレーションの効果や事例、予防保全によるライフサイクルコスト低減などについて持論を展開。協会技術委員長の江良和徳氏は、「コンクリート構造物の劣化と補修技術」の中で塩害・中性化・ASR補修の基本的な考え方に言及し、「劣化メカニズムを考慮して補修工法の選定をするべき」と強く呼びかけた。(一社)セメント協会の早野博幸氏(太平洋セメント)は、「すぐに役立つセメント系補修・補強材料の基礎知識2018」で、断面修復工法と断面修復材のポイントを伝授した。
このほか、2日目にも各分野の専門家が登場。日本ペイントの中丸大輔氏は「コンクリート用塗料の性能と機能~塗布型剥落防止塗料と視認性付加塗料~」、日本エルガード協会の田中一弘氏は「電気化学的防食技術と健康寿命」、江良氏は「亜硝酸リチウム補修技術と健康寿命」、CORE技術研究所の真鍋英規氏は「PC構造物の健康寿命を延ばす維持管理」、(一社)STTG工法協会の佐藤亘氏は「石油樹脂・アクリル樹脂系材料を用いたコンクリート構造物への圧力注入止水工法~STTG工法~」、K―PREX工法協会の三原孝文氏は「既設コンクリート構造物へのプレストレス導入技術と健康寿命」、ダイクレ興産の野村一貴氏は「支承リバイバルシステム~金属溶射と常温亜鉛めっき塗装による既設橋梁支承の長寿命化工法~」、高耐力マイクロパイル研究会の稲冨芳寿士は、「既設構造物の健康寿命を延ばす基礎補強技術」をそれぞれ披露した。