本日は平日のご多忙にも関わりませず、かくも多数ご参加いただき有難うございます。
また、昨日からの雨による災害でお出かけにくいところ有難うございます。
本年度の私たちのテーマは「構造物の健康寿命を延ばすためのシナリオ」で、全国13都市で補修補強に関するフォーラムを開催いたします。新潟は、8会場目となりまよるす。
コンクリートメンテナンス協会の本部は広島にあります。広島は海砂による塩害、山間部では融雪剤による塩害、そして、ASRによる劣化が多い地域で、北陸地方のコンクリート劣化と非常によく似ています。
その様な、コンクリートにとって過酷な環境で四半世紀補修に取り組んできました。初期は失敗も多かったのですが、次第に失敗しない考え方と工法が分かりだしました。
それで、要望にこたえる形で5年前、一般社団法人化して、フォーラムという形で全国公演しています。
さて、コンクリートの補修は非常に分かりにくいと言われますが、本年度のテーマであります、「健康寿命を延ばすためのシナリオ」そして本日紹介します補修技術をご理解頂けたら、決して難しくはありません。
我が国の社会資本を支える様々なコンクリート構造物は確実に老朽化し、劣化が進行しております。
このまま供用し続けると社会資本としての要求性能を満たせなくなる危機に面していると感じています。
その危機を防ぐには、「構造物が適切な性能を維持しうる期間」すなわち、「構造物の健康寿命」を延ばすしかありません。
コンクリート構造物の健康寿命を延ばすには,対象コンクリート構造物の将来のあるべき姿を想定して、「どのように維持管理していくか?」というシナリオ作成から始めたらどうでしょうか。
過去に、ひび割れがあるから、エポキシ樹脂を注入する、あるいはひび割れ充填する。鉄筋が露出しているからポリマーセメントモルタルで断面修復をする。という物理的劣化症状に物理的対処の補修をしてきました。
三週間ほど前ですが、広島で道路橋からコンクリート片が新交通システムの線路橋に落下して、新交通システムがしばらくストップするという事故が発生しました。
その落下したコンクリート片は以前に行った断面修復の補修材でした。なぜ、コンクリート片は落ちたのか?をしっかり検証しなくてはまた、同じことは発生するかもしれません。
それでは、私たちの補修の考え方を紹介させてください、それは、 「コンクリートの補修は定量的に考えれば難しくない」です。
例えば劣化機構が塩害だと
・劣化因子の塩分はどれくらい入っているのか?
・それは腐食発生限界値よりも上か下か?
と云う数値をもとに、
・必要とされている対策工法は、劣化因子遮断か? 鉄筋防錆か?
・構造物の重要度は? 経済環境は? を加味すれば
絶対に再劣化させない工法の選択か、もしくは、施工費が安い、再劣化を許容する工法を選択するのか?
が見えてくると思います。
すなわち、将来のあるべき姿を想定して、維持管理のシナリオを作成することが、健康寿命と非常に関係が大きいと考えます。
劣化機構に応じて補修材料と工法を選定するだけでなく、
・それを定量的な観点に立って補修設計することが大切だと考えています。
・また、補修後の維持管理シナリオを、経済性を考慮した、時間軸で捉えることも重要です。
・再劣化させない工法が常に正しいとは限らないと思います。
・必要最小限の費用を投じて再劣化を許容する維持管理のシナリオ
も、構造物の与えられた環境を考えるとあるはずです。
定量的な補修工法と維持管理シナリオを総合的に組合わせることで、コンクリート構造物の長寿命化の実現、そして持続可能な社会の実現に寄与できると考えています。
ここにご参集の皆様はコンクリート補修に関わる専門家だと思いますが、是非とも本日はお持ちの知識と経験にとらわれないでご聴講頂ければと思います。必ず、皆様の業務のお役に立てる内容だと思います。
長時間となりますが、最後までご聴講をお願いいたします。