2025年9月22日 セメント新聞
2025年9月22日 セメント新聞
JCMA 補修・補強フォーラム VFMやSI型入札解説
コンクリートメンテナンス協会(JCMA、徳納剛会長)が開催するフォーラム2025〜持続可能な未来を見据えたコンクリート構造物の維持管理〜」が6月の広島を皮切りに、全国12都市で開催されている。8月27、28日の東京会場(東京フォーラム)では徳納会長の開会あいさつに続き、小林賢太郎国土交通省大臣官房技術審議官、宮川豊章京都大学名誉教授、松井繁之大阪大学名誉教授、十河茂幸近未来コンクリート研究会代表らをはじめ、発注者、学識者、JCMAや関係業界団体などから10人の講師が講演を行った。
同フォーラムはコンクリート構造物の維持管理に特化した講習会として国内最大規模で、24年度には全国で約5700人の参加者を集めている。
東京フォーラムの初日、「国土交通行政の最近の話題について」と題して最初の講演に立った小林賢太郎国土交通省大臣官房技術審議官は、昨年度の改正にあたって公共工事品確法に盛り込まれた「VFM(価格に見合った価値)」の考え方や、これを具現化した新しい入札方式である「技術提案評価SI型」の試行状況などを解説。「従来の技術提案では、新技術の活用を提案する受注者がその費用を負担する形となっており、インセンティブが十分ではなかった。SI型では、提案技術による工事品質の向上や環境改善などの価値を適切に評価し、そのコストを発注者が負担する。今年度から同方式の試行工事を開始し、効果をみながら普及させていきたい」とした。
また、今年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国交省が設置した有識者委員会「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」(家田仁委員長)の検討動向を紹介。「下水道にとどまらず、今後のインフラマネジメント全般を射程に入れた提言が議論されており、ここでは重要論点として4つのM、すなわち、①データ等による徹底的な『見える化』②点検・調査の『メリハリ』③現場の『モチベーション』④国民の理解と協力を得るための『モーメンタム(機運)』が打ち出されるだろう。インフラ構造物の主要材料であるコンクリートに関わる皆さんにも、ぜひ注目していただきたい」と述べた。
このほかセメント協会からは補修・補強材料推進WGの水島潤氏が登壇し、「セメント産業の持続的発展への貢献とセメント系補修材が果たす役割」をテーマに講演し、セメント系補修・補強材料の基礎知識のほか、カーボンニュートラルや資源循環に向けたセメント業界の取り組み、今後のロードマップなどを紹介した。
宮川名誉教授は、2日目に「適切なコンクリート構造物の維持管理から持続可能な未来を」と題して登壇し、「産業革命以降、生産こそが善とされてきたが、これは幻想。様々なインフラをみてもわかるように、実際には造るための時間や経費より、使う時間・経費のほうが圧倒的に大きい。すなわち、生産ではなく維持管理こそが工学の本道であり、真に生産的な行為。DXやICT、AIなどの新技術もむしろ維持管理にこそ活用していくべきだ」と述べた。