2025年7月7日 北海道建設新聞
2025年7月7日 北海道建設新聞
シラン系含浸材効果最大化
コンクリート長寿命化 補修・補強フォーラム 水分管理が鍵に
シラン系表面含浸材は、コンクリート構造物の長寿命化に欠かせない保護材だ。寒地土木研究所の遠藤裕丈主任研究員は、効果を最大限に引き出す鍵は、施工時の適切な水分管理にあり、施工不良の多くがコンクリート中の水分に起因すると指摘。土木学会では、設計施工指針案の改訂を進めていて、最新研究に基づく補修技術の普及に期待を寄せる。
コンクリートメンテナ協会(本部・広島)が2日に開いた「コンクリート構造物の補修・補強に関するフォーラム2025」で講演した。
シラン系表面含浸材は、コンクリート表面に塗布することで内部に浸透し、水の浸入を防ぐ吸水防止層を形成する保護材。遠藤主任研究員は、最大の特徴を「外部から水の浸入は防ぎつつ、内部の湿気は外に逃がす点」と紹介。この性質でコンクリート内部の乾燥を促し、水分が起因となる鉄筋の腐食を抑制する。再塗布の回数を増やすほどスケーリング(表面の剥離)を減少させる効果もある。
一方、紫外線によって表面の撥水(八水)機能が数年で低下するなどの課題もある。効果の持続性弥実環境らかにするため、寒地土木研究所では長期追跡調査を実施。施工から10年以上が経過した橋梁では、表面の撥水性が失われてスケーリングが見られたものの、内部の吸水防止層は機能し続け、塩害の原因となる塩化物イオンの浸透を抑制していることを突きとめた。
施工不良を防ぐ留意点も紹介した。施工不良が発生する最大原因は「コンクリート中に含まれる水分」と指摘。シラン系表面含浸材は、コンクリート中の水分と加水分解して固着する。このため、水分が多いと内部に浸透する前に表面付近で固着し、十分な厚さの吸水防止層が形成されない。
塗布前にコンクリートをしっかり乾燥させることが対策となるため、電気抵抗式水分計を使った調査を推奨する。浸透が始まる塗布後の管理も重要で、冬季施工は前日からの加温に加え、塗布後も加温を続けることで厚い吸水防止層を形成できる。夏場の高温多湿な環境は塗布後の除湿が効果的で、送風だけでは不十分とした。
含水状況を非破壊で確認する方法として、無塗布区画を設ける管理手法も紹介。無塗布範囲で表面方向への撥水域の有無から含浸状況を評価する手法で、詳細な手順は土木研究所資料「コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル2022年版」を参照するよう伝えた。
土木学会では、2005年に発刊した表面保護工法設計施工指針案の改訂を進めている。シラン系表面含浸材も長期追跡調査や最新研究の成果が反映される予定だ。「最新の知見を盛り込み、より実用的な指針となるよう議論を重ねている。2年後の発刊を予定しているため、注目してほしい」と呼び掛けた。